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タカヘ・キャッチング

(ノートPC復旧、ようやく更新できます。8月下旬に作っておいた記事です。)

あまりに愛するあまり再び訪れてしまった、TIRITIRI島(オークランド周辺に位置する、鳥のオープンサンクチュアリ(詳しくは7月19日の記事に)。今回もボランティアスタッフとしてTiri島に一週間滞在させてもらった。

◆タカヘ・キャッチング
(タカヘについては この記事をチェック)
◆基本的に野生の鳥類に触れることは厳禁であるということは、自然保護活動において大前提といえる。しかし俺は今まで何度も何度も、タカヘのそのふさふさした羽毛に触ってみたい衝動に駆られたことがあったものの、その都度耐えてきた。
そんな煮え切らない感情を押し殺していた中、この島に滞在するDOC(環境保護省)スタッフでさえも「めったにないこと」という“タカヘの身体調査”が滞在中に行われることを知った。むろん「手伝って見る?」と聞かれて断るわけもなく、「もう、ぜひ!(触らせて)」ということで、その活動に参加させてもらったわけだ。
要は健康診断、だけれども、鳥類に詳しい獣医がタカヘの研究のためにこのTiri島に3日間滞在しての、本格的な調査だった。

◆調査は長期戦を覚悟に、早朝から始まる。
まずは何より、タカヘを捕らえなければならない。DOCスタッフが朝から頑丈そうな虫取り網を持って歩いていたから、どうやって捕まえるのかはこちらも承知していた。
ただそーっと近づいてバサッとやるのかと思いきや、専用の撒きエサも用意されており、そのエサに夢中になっている隙に、網を被せて取り押さえるらしい。
悲しいかな、タカヘはやはり動物だ。ヒトが作ったおいしい餌には弱かった(苦笑)。
ある程度警戒はしながらも、餌を撒くと ―いや、撒く前からすでに― 一目散にやってきて、餌のすぐ隣においてあるでっかい網に気付くことなく、食べてる内に網を被せられ捕まっていく。実にあっけない。それはヒトに慣れた年配タカヘに顕著で、多くの若いタカヘは警戒心が非常に強く、かなりの苦戦を強いられることもしばしばだった。
しかしそんな持久戦も最終的には、人間が勝つ(笑)。どのタカヘもエサの誘惑に耐えられず、茂みからトコトコでてきてくれた。

捕まえた後は頭と足をしっかり掴み、ひざの上に乗せて、ようやく“健康診断”が始まる。
血液・糞を採取し、肛門に綿棒を突っ込んで付着物を取り、口ばしをこじ開け口内を診察、そのほか身体に異常がないか、体をくまなくチェックしていく。
もちろんタカヘはじっと我慢してくれるわけではなく、時折激しく暴れようとする。興奮ついでに糞を落として抵抗する(これを採取するわけだが)。なんだか、人間とタカヘの知恵比べのような気もした。

その調査の中で、一匹のタカヘを掴ませてもらった。
診断中、タカヘをひざの上にのせて押さえ込む役だ。
前回この島で会ってからというもの、完全にほれ込んでしまい触れてみたくてしょうがなかった、タカヘ。その憧れの存在を(笑)触るどころか長時間抱きかかえることができて、本当に単純なんだが嬉しくて仕方が無かった。
抱いてみると、分厚い羽毛の下から確かに鈍い体温が伝わってくる。じっとしているように見えて、心臓はものすごいバクバクしてる。足は恐竜みたいで太く、羽もチューブから出したての絵の具のように色鮮やかだ。抱いたのは去年生まれたばかりのタカヘで軽く、色も鮮やかさが若干足りないのだが、おれにとっては記念すべき最高のタカヘだ。
最後に、健康だよと診断されて、意気揚々と草むらの中へ帰って行った。
本人が写っていて申し訳ないんだが、ぜひぜひ俺の人生史に残る、このタカヘを抱いた写真を掲載しておきたい。(顔がニヤけているけど、見逃してやって。)

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誰でも体験できることではないはずだ。ボランティアスタッフとして島に滞在していること、めったにない定期の健康診断が予定されている事という条件がかみ合わなければ、この体験はできない。本当に貴重だと思っている。俺にとっても、本当に忘れがたい体験だった。

さて。
俺が今相当に興味を抱いている鳥類と、それに関わる保護活動とNZの生態系。
この3つを得意としている獣医の、いわば鳥類の専門家の調査を、目の前で見ることになった。DOCスタッフにタカヘの体の各部分について説明していたくらいだから、十二分に専門的な知識を有しているのだろうと推測できる。
調査に同行した2日間、ずっと思い続けたことがある。
「知識を有するってのは、本当に面白い。」ということだ。
単純、だけど、素晴らしい法則。
心から、本当に心からそう思える。自分の興味ある分野の知識を“専門”と呼べるくらいまで高めることができたならば、どんなに楽しい人生になるだろうと思わずにはいられない。もちろん知識を実行に移すための「技術」も必要だけど、技術だけあっても足りないだろう。その前に知識がないと、自分の行動を楽しめないのだから。

実のところ、「専門的な知識があればタカヘにだって好きなだけ触れるんだな!」ってもの単純な俺にはけっこうなインパクトだ。こういう単純な刺激が、意外と、というかやはり、自分には必要なのかも知れないな、とも思う。

話は飛躍するが、自分の日本での身分は「総合政策学部で学ぶ大学生」だ。この学部、物事を広く浅く学べる学部といっても間違いではない。
この学部でたくさんの知識を広く学んで、その後に専門的な分野に進んで深く学べばいい。そういうつもりで俺はこの学部を選んだ。そして今、そろそろ、その“専門領域”を作るための選択肢を造り出さなければいけない時期になったのではないだろうか。


知って、行動して、体験して、考えて、そしてまた新たな知と行動を作り出す。
この一連の動きを、俺の人生の中でもっともっと作り出したい。
まずは、偶然にも出会ったこのNZの生態系というもの。これを掘り下げてみたいと思う。

なんだか連鎖が増えていくようで、とても嬉しい。
by Mr-chirujirou | 2006-09-10 13:38 | NZ - 自然保全活動ボラ