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『Kea』 鳥の視点@NZ鳥図鑑 #5

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名称: Kea (キーア/ ケア)
和名: ミヤマオウム
ステータス:固有種(NZの、南島の、南西部の、山岳地帯にのみ生息)
生息地: 高山地帯。森林限界前後に住む
撮影場所:Arthur’s pass national park , Milford sound track
食べもの:フルーツ、種、葉などの植物から、昆虫類、はたまた生ゴミや死肉まで幅広い
詳しく:世界を見渡しても数種類かいない、山岳地帯に生息するオウム。近隣種に、“森のオウム”ことKakaがいる。知能がずば抜けて高く、とあるテレビ番組がイルカやサルなどの“知能派動物”と知能比べをさせたところ、なんとトップはキーアだったそうだ。つまり非公式ながら、キーアは世界一頭のいい動物とも呼べるわけだ。生息数約5000羽、減少の理由は次項に譲る。

鈍く鮮やかなオリーブ色の羽を全身にまとい、さらに翼部のウラにはオレンジの羽毛を持つ。荒涼とした山岳地帯にあって、キーアの存在は“高山の花”と言っていい。

ニュージーランド南島南西部の山岳地帯はいくつかの国立公園によって成り立ち、ミルフォードをはじめとする南部は世界遺産にまで登録されている、NZの中でもアルプス連なる指折りの美しい“聖域”だ。その聖域に、世界的に希少な山岳オウム、キーアは生息している。世界遺産であると同時に、この地域はトランピングのメッカでもある。南島で本格的なトランピングをしたことがある人の多くは、キーアが甲高い声を発しながらアルプスを飛び回っているのを見たことがあるに違いない。ちなみに、名前の由来は、マオリ人がこの鳥の鳴き叫び声「キィィァア~!」をそのまま名前にしたことによる。

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このキーア。何が有名かって、その美しい羽でも希少な山岳パロットだからというわけでもない。ずばり、“naughty boy”、つまり「悪戯大大大好きなオウム」として(悪名!?) 名高いのだ。山を楽しむトランパーやサイクリストからの被害報告は後をたたないらしい。自転車のハンドル部のスポンジを自慢のくちばしで引っ張り出し、寝袋をズタズタにし、自動車の窓枠のゴムを引きずり出す・・ちょっと穴を開けられるくらいなら可愛いもんだが、山登り用のトランピングシューズを持ち去られてしまっては敵わない。
事実ミルフォードトラックを歩いているとき、友人が室内用スリッパを外に置いていたら、キーアにあと一歩のところで持ち去られそうになったことがあった。

ミルフォード・トラック、一泊目のハット(山小屋)の管理人が夜の集会で言っていた説明が面白い。長時間のトランピングを終えてハットに辿り着いたトランパーらの靴は、当然ながら(!?)若干匂う。そんな靴を何十足も室内に置くわけにはいかない。絶対寝れない。だから大抵は皆、外に出して陰干をする。しかしこれら靴の大群が、悪戯大好きのキーアの眼にとまらない筈が無いのだ。内にしまっても地獄、外に出しても地獄。管理人はこのどうしようもないジレンマをこう説明してくれた。「一晩の間靴は外に出すことをお勧めしますが、そこから先はロシアン・ルーレットです。皆さん、自分の靴がキーアの被害に遭わないように祈っていてください」、と。靴が命のトランパーにとって、何と過酷なルーレットなのだろう。管理人は靴を紐で繋げて壁にかけておけば、重くて持ち去られないから大丈夫というが、こっちは気が気じゃない。

上のエピソードが示すのは、悪戯好きな性格もそうだが、キーアの驚くべき力強さだろう。シューズ一足くらいなら難なく持ち去れる足と、ゴム製品くらい雑作もなく千切れる強力なくちばしを持っているのだ。もちろん悪戯をするために強くなったわけじゃなく、これらを食物の乏しい山岳地帯で生き延びるために発達させたわけだ。

このキーア、今となってはアルプス地帯の名物として親しまれているものの、19世紀までは羊を食う害獣と汚名を着せられ、ファーマーに発見しだい撃ち殺されていた過去を持っている。19世紀の70年間で150,000羽以上が撃ち殺されたとの記録が残る。駆除のため補助金まで出ていたと言うから、羊の国NZにとっては死活問題であったのだろう。だが実際には、キーアが健康な羊に食って掛かることはほぼ無く、現在は1986年に出された法律で完全に保護されている。現在、生息数がたった5000羽程度しかないのは、かつてこの人間の無知から来る誤りがあったからだ。

個人的にのろけを言わせて貰えば、このキーアは外見こそ大きく、好奇心旺盛で人を恐れず近寄ってくるから少々怖い印象を持たれがちだが、よーーく見ると、ほんっとカワイイ。この愛嬌のある顔を前面にだし、俺の目の前で甲高くちょっと情けない声で「キィィァア~」と鳴かれた日には、すっかり惚れてしまうのも無理はないというものだ。なんてかわいいのだ。

キーアを見るにはアーサーズパス国立公園に滞在するのが一番確率が高いと思う。朝方、バッパーなどの宿がある村まで降りてくるため、森林限界以降まで登らずとも見ることができるはずだ。もちろんその他、南島南西部のトランピングコース上でもよく見かける。怖がらず、じっくり観察して見て欲しい。きっとキーアの魅力に気づくはずだ。

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(ほら、かわいいでしょう? 写真は全て、アーサーズパスのアバランチ・ピーク頂上にて。ちなみに最後の写真、UPした写真の大きさでは分からないけど、キーアの瞳の中に俺がいます。)
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by Mr-chirujirou | 2006-12-09 16:49 | NZ - 鳥の視点@NZ鳥図鑑