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『ファンテイル』 鳥の視点@NZ鳥図鑑 #3

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名称: Fantail
和名: オウギビタキ
生息地: NZ全国、きわめて一般的
撮影場所:Tiritiri Matangi Islandなど
食べもの: ハエ等の小さな昆虫類
詳しく:ユーラシア・アフリカ・オーストラリア・太平洋諸国に生息する、ヒタキ科オウギビタキ属の小鳥。名前の通り、そのfan(扇)のような尾が特徴的。NZには3種の亜種が確認されている(North Island, South Island, Chatham Island )。色は黒や茶が一般的だが、真っ白もまれに存在するらしい。

――One of New Zealand’s best-known and most-loved birds
(『Which New Zealand Bird?』より抜粋)
最も一般的で、これほど愛されている鳥類はこのファンテイルをおいてほかにないだろう。
鳥類にあまり関心がないNZ旅行者でも、この印象的な鳥を覚えている方は多いんじゃないだろうか。

英語名はfantail(扇状の尾)、和名は扇ビタキ。
そう、この鳥はなんと言っても大きな扇のような尾が印象的なのだ。
なんとからだと同じほどの大きさがあり、不釣合いともいえるほど大きい。
黒っぽいからだに白い扇が花開いた様子は、一目見ればまず忘れないだろう。

このファンテイルが「最もよく知られ」、「最も愛されている」理由。
その一つは、蝶のようにひらひらと舞うその飛び方にある。
俺自身、蝶や落ち葉と勘違いしたことが何度もある。
ゆらゆらと飛んでは急に向きを変え、何度もからだを翻すように飛び回ったのち、やっと近くの木の枝に止まる。しかし3秒と居座らず、またフワフワと飛び出す・・
手元の鳥図鑑には“restless bird”とあるが、まさにその通りだ。
その時々で、耳になじみやすい「ピッピッ」という鳴き声を発したり、自慢の扇を開いたり閉じたり。まったく見ていて飽きない。

そしてこのファンテイル、
その見る者を癒すような飛び方で、ヒトの後を追いかけてくる。
郊外の散歩やトランピング中などに出会うことが多いのだが、ヒトを見つけると、逃げるどころか向かってきて、ゆらゆら旋廻を始めるのだ。
そして、どこまでも気が済むまで追いかけてくる。
ファンテイルからすればヒトに驚いた虫たちがあわてて飛び出すのを待っているわけだけど、 ヒトから見れば自分の後を追いかけてくれる人懐っこい小鳥に他ならない。
まったくヒトを誘惑するのが上手い鳥なのだ。

当然といえば当然なのだが、(?)
単純な俺は、その“誘惑”にすっかり負けてしまった。
可愛くて可愛くて仕方がない。
この小鳥を一羽持ち帰ることが許されるならば、俺は他に何もお土産はいらない!とすら思えてしまう。(そんなことは出来てもしないが。)

絶滅危惧種が多く生息するTiri島で好きな鳥を尋ねられても「ファンテイル」と即答するし、手元の鳥図鑑に「手や肩の上にも乗る」と書いてあるから、出会うたびに手を差し出して俺の手に停まるのを待っている。

こいつは、かわいい。

タカヘがどこか畏敬の念も混じる可愛さならば、
ファンテイルはただただCUTE。手にとって言葉でもかけてやりたくなる、そんなかわいさがある。
Tiri島で6羽のファンテイルの乱舞歓迎を受けたときは、まさに夢心地だった。

余談だが、ファンテイルを愛してやまない俺は、9月に行くつもりのフィジーでも、貴重な時間を使ってこの小鳥を見に行こうと思っている。フィジーには、spotted fantail (要はまだら模様なのだろう)という亜種が生息しているらしく、俺はフィジーというリゾート地でダイビングでもアイランドトリップでもショッピングでもなく、一羽の小鳥を見に行こうと企んでいるのだ。・・よく考えたら普通じゃない。


最後に、まじめな話を一つ。
鳥図鑑#1で書いたとおり、この国には以前は存在しなかった哺乳類が繁殖してしまっている。それが原因で多くの鳥類が今、数を減らしている。
ファンテイルに限って言えば、数自体はおそらく減らしていないだろうし、近く絶滅するという恐れもまずないだろう。だが、主に地面にほど近いエリアで活動し営巣もするこの鳥は、かなりの確率で哺乳類に襲われているだろうと推測できる。事実、ファームステイをしているときに飼い猫に襲われ、食われているのを2度も見た。
この鳥が絶滅危惧種などという悲しいレッテルを貼られないのは、森だけでなくヒトが住むエリア――例えば牧草地や、時には民家の庭まで――でも、適応し生息することができるからだ。

そういう偶然にも持ち合わせていた“人間圏への適応力”という、その(ある種の)幸運でもって、今これほどこの種が一般的でいられるという事実を持った上で、この小鳥を、愛していただきたいと思う。


「夕暮れ時に出会ったファンテイル」
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by Mr-chirujirou | 2006-08-19 16:52 | NZ - 鳥の視点@NZ鳥図鑑