典型的な“家屋”
その多くは、やや正方形に近い長方形をかたどったコンクリ製の建物だ。
ある程度の大きさがある家は内部に多少区切りがあるようだが、遠巻きから観察した限りでは区切りが無く居間ひとつ、という家庭も多く見られた。2階建てはあまり多くない。2階建て場合の多くは、一階部分が店舗や何らかのスペースになっているようだ。
中心部から離れて島の端部に向かうと、満潮時の海水位に対応するかたちで高床式となっており、トタン板のような壁と簡単な屋根でできた質素な建物が目立つ。経済的に言えば、貧困層と呼べるのかもしれないが、それも少し違う気がする。
話の焦点を建物から敷地全体に移してみると、その多くはコンクリ製のメインの住まいとは別に、すずみ台のようなこぢんまりとした建物がある。高床式で、木とフラックスのような葉で作られた床と屋根だけの簡単なものだ。これはコンクリ製が普及する前の伝統的な家屋らしい(トマ氏談)。それもいまや、ただ寝転がったりトランプを興じたりするための休憩スペースのようになっている。
“すずみ台”
ただ、ある一人のおばちゃんが不満を漏らしていた通り、コンクリの本家は暑くてとても昼間に寝れたものではない。すずみ場は、この国に合った建物なのだ。以前までは家として機能していただけのことはあり、東側に口をあけるようにして建ち、そのまま西に吹きぬけるようになっている。西側は棚などの荷物が置かれるスペースになっている場合もある。高温で、常に東から風が吹くこの国の風土に適応した建物だと言える。
人口密集度が高いと聞いていたが、俺個人の感想から言えばそれほどのものではなかった。
フィリピン・セブの方がよっぽど密度が高かった。ツバルでは一応どの家も、共有の場合もあるとはいえ庭にあたる広場が必ずあり、その合間を縫うようにブレッド・フルーツの木やバナナが植えられている。島の面積と比べて人口は多いのだろうが、家族の数で言えばそれほどでもない、ということだろうか。(確かな知識が無いため全て憶測、だが。) しかし、今後の人口増加にこの国の土地が耐えられるかと問われれば、そうではないと答えるほか無い。